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【旅】Chicago-NYC 第5話「ナイトドリフティング、出発の朝」

第5話「ナイトドリフティング、出発の朝」

■CHICAGO O’Hare International Airport 15:40 28/Dec

—再びシカゴ。さすがにこの日記を読んでる人達は「こいつアフォぢゃないか?」と思うくら
い「普通の旅の仕方ではない」気が、書いてる本人でさえするこの瞬間だったりするが・・・

そう、再びシカゴに降り立った。昼過ぎにNYCを飛立った便は、東部時間と内陸部の時差のお
陰でフライトタイムを事実上1時間削減し、まだ午後を楽しむには余裕のある時間だ。なかな
か出てこないバゲージを受け取りタクシーで空港近くに取ったホテルに急ぐ。

・・・しかし。着いたホテルは予約時に想像はしていたものの、本当にアメリカ映画によく出
てくる「そのまま射殺体で発見されそう」なモーテル(笑)。なんとも愛想の悪い受付に鍵を
渡され、トイレを掃除する消臭剤の匂いが微かに漂う薄暗い廊下を自分の部屋まで歩いてゆ
く。・・・無駄に広い部屋に入り、幸運にもネットだけは無線LANで提供されている事を確認
し、冷蔵庫の上に置かれたコーヒーメーカーに粉を入れ、コポコポとコーヒーを煮出す。
チェックイン時に言い忘れたせいで部屋はノンスモーカーズルーム。ま、どうせチェックアウ
トの時にはわからねーだろうと、風呂を締め切り一服。こうやって逞しくどこでも煙草を吸お
うとするスモーカーの根性が俺はちょっとだけ好きだ。微かに漂うコーヒーメーカーからの薄
いコーヒーの匂いをかき消すかの様に、風呂の鏡に映った自分の吐き出す紫煙が場をフィリッ
プモリスの匂いで満たしてゆく。


部屋に戻り、夕食をどこで食べるかガイドブックとにらめっこする。そういえばここまで独り
身で海外を旅行するのは久しぶりかもしれないな。LAに入社当時に遊びにいった時でさえ、
現地では遠い友人が迎えてくれて一人でご飯を食べた記憶は無い。ま・・・そんなのもなんだ
か今年を象徴していていいじゃないか。・・・そんなちょっとだけマゾヒスティック(自虐
的)な感傷に浸りつつも、見つけたのはアジアエスニックのヌードルが美味いという
「Joy’s」。リグレーフィールドにも近いので、空港(このホテル)からしてみればかなりの
距離だ。最終夜、シカゴをフラフラと散策するには丁度よい距離だと、ここに決める。

空港までのシャトルバスに乗り込み、再度空港へ。オヘア空港からシカゴのダウンタンまでは
タクシーを使わずに「ブルーライン(Blue Line)」という地下鉄を使ってゆくこととする。
約40分程度必要だが、車窓からなんとなく街を眺めつつ行くのもいいし、何より安い。案内
に従い、BLの改札までたどり着く。そこでNYCでいうメトロカードに相当する「CTA
(Chicago Transportation Authority)カード」を購入し、ちょっとだけNYCと違う方法で
(スワイプ式ではない)改札を通過し電車へ。始発なのでエッコラセ、と座席に座りiPodに
電源を入れる。・・・これが良くなかったのか、車窓を眺めつつ乗客の質(ヤバイか、ヤバク
ないか)を眺め安心した所で眠りの森へ・・・。乗換えをしたかった「Clark駅」を通り越
し、気がつけば「ここ何処?」状態。幸いにもそんなに乗り過ごしてなかったので、反対線に
乗り軌道修正。丁度このダウンタウンエリアの地下鉄は多くの映画に登場する高架鉄道になっ
ており、「シャル・ウィ・ダンス」の米国版では主人公がぼんやりとダンス教室を眺める通勤
電車としてこの高架鉄道が使われている。ニューヨークのブルックリンへ向かう路線や、ヤン
キーススタジアムへ向かう路線も同じ様に古い高架だが、そんな妙にアメリカを感じさせるヒ
ステリックながらも人間味に満ちた鉄の軋み音を残して景色が後ろへ飛んでゆく。


■CHICAGO Belmont Station 19:25 28/Dec

途中でどっぷり日が暮れて来てしまい、目的の「Belmont駅」に着く頃には真っ暗。車窓は
途中から住宅街に変わっていたので、普通に駅前商店街の様なエリアを住民達と足並み揃えて
歩きながら目的の「Joy’s」を探す。・・・しかしこのエリアの町並みはアメリカ的に石が存
分に使われた家が軒を連ねる割にはなんとも優雅な佇まい。街路灯の支柱にはクリスマスのキ
ラキラした飾りが巻き付けられ、水銀灯の光を反射して町中がクリスマスツリーの一部の様な
にぎやかさに溢れてる。冷え込んで来た空気はより一層大気をクリアにさせ、行き交う車でさ
えなんだか演出されたオブジェクトの様に異邦人であるおいらの目には届いてきてしまう
(あぁ、感傷的・・・)。シカゴはブルースの街として知られるが、iPodからはJAZZ系の
ラウンジコンピがチャララララーっと。ソウルフルな声がまったく入らないインストゥルメン
タルを聞きながらの散策も悪くない。っていうのは、歌のない音だけを聞いていても、街の人
の話し声や、街そのものの呼吸感が歌となって曲に彩りを与える気がするからで、なんとも言
えないフローティング(浮遊)感を伴いながら歩いてゆける。


音と映像の記憶はかなりの部分で人間の記憶を呼び覚ますトリガーとなる。特に音というもの
は、人間が生まれる前に最も発達が進む機関である「耳」の名残を受け、非常に脳へのインパ
クトが強い。もちろん他の五感も同様にトリガー要素としては優秀なのだが、「音の記憶」や
「音からの情報摂取」は我々の生活の多くの行動を左右している。・・・例えば、街で聞き慣
れたドンキホーテの歌を聞けばそこにドンキがあるのか?と目を向けてしまったり、ボーッと
歩いている時にふいに聞こえたセールの情報に耳が反応して商品を探してしまったり・・・。
広告の世界でも近年サウンドを活用した販促の事例は枚挙にいとまがない位だ。・・・さらに
個人的な意見だけど、感覚器官そのものが情報を遮断し得ない五感として考えると「耳」
「鼻」が残る。「触感」である手や肌は触らなければ知覚し得ないし、「視覚」はまぶたで情
報を自ら遮断出来る。「味覚」である口も唇で情報を遮断出来る。つまり、もっとも否応無し
に情報を送られる器官が「聴覚」と「嗅覚」だ。うなぎ屋の前で逆らえないのを思い出しても
らえば、その全ての五感にインパクトを与える嗅覚の恐ろしさがわかるってものだろう。

そんな音に紐づかせながら今はシカゴの街を歩いている。「空間による心理的な影響」を
「サイコジ(ェ)オグラフィー」と言う。同様に「精神地理学」という意味もあるが、場所に
よる心理的な影響を考察する際にも同義で使われている。この空間に紐づいた俺の記憶は次に
シカゴを訪れた際にどういう記憶、心理的影響となって表出するのか。たぶんニューヨークの
サイコジオグラフィーが俺にとって「安堵、再会、寄りどころ、再生」の様な意味を持つとす
れば、あくまで仮定だが、シカゴは「葛藤、再確認」の様な意味を持ってくるんじゃないのか
な。


なんて小難しいことを本当に考えていたのかはさておいて、そろそろ「Joy’s」が視界に入る
ハズ。予想では黄色と赤の電飾看板でいかにもアジアンエスニック!な佇まいがあるはず、
と踏んでいる。・・・が、どこにもない。・・・地図では正しい位置なハズだけど・・・と
思った瞬間真横に広がるお洒落なカフェの様なお店によぉぉ〜くみると「Joy’s」と書いてあ
る!!!えっ?これ?すんごいお洒落やん。ガラス張りのエントランスから一歩店内へ。
すぐにチャイナ系っぽいおばさんが人数を聞いてくる。「あぁ、いやおいら一人ね(笑)」
と、あたかも近所の人かの様にサササーっと席に通されメニューを確認。焼売らしき物があっ
たので、それとエスニックチキンヌードルを注文し、プラスコーラ(笑)。焼売は直接
「シューマイ」と発音したら普通に通じていた・・・。何語?シューマイって日本語だよね?
ん?中国語か・・・そうか。でも発音違うはずなんだけど、まぁいいか。

シューマイを甘ったるいタイ風ソースに付けて食べる。不味い。
シューマイの良さが吹っ飛んでる。

醤油を取り寄せ、バババっ!っと醤油をかけ食べる。美味い。
シューマイの良さが再認識できた。

【どうみても冷凍では?と思わせる焼売】


【汁物かと思ったのに目一杯予想を外されたヌードル】


あやしげなてんこ盛りヌードルは、タップリのスープに入ってくる俺の予想を完璧に、完膚な
きまで裏切りごらんの様。ただ、これはこれでなかなかの美味。もう少し香草てんこ盛りでエ
スニックにしてくれて、味付けもスパイシーだったら多くの人がハマる味付けになったと思
う!・・・真横では「シカゴな連中」が上手に箸を使って食べている。こんなに箸が一般的な
道具として浸透しているとは・・・。しかも俺より正しい握り方してやんの(汗)。確か合計
で10$位だったと思うので、安く夜をあげる事が出来た。ま、1.5時間も飯食べる為に旅して
来たんだからそのくらいじゃないとね。あまり観光客がうろうろしないだろうただの住宅街で
近所の住民に混ざって食べる一人ご飯も格別!食にガッツのない湯葉兄ではあるものの、旅の
時はうっすらへんなコダワリを持って「えさ場」を求める事がある。・・・コーラを飲み干し
退散。

【街はクリスマスの雰囲気を残していてキラキラしている】


【本屋で見つけたかっちょいいデザインの本】


■CHICAGO West Diversey 21:38 28/Dec

腹ごなしに一駅分歩いて、最後のシカゴの夜を味わう。パチリパチリと写真を取ったり、でっ
かい本屋でデザインの本を漁ってみたり(ご覧の様なかなりいー感じの本を見つけた!)、
親への土産を探してみたり・・・と。1km程度しかない隣駅まで遠回りしながらのナイトド
リフティング。ダウンタウンでも乗換え時にちょっと違う路線を使って、再度シカゴのダウン
タウンを散歩する。・・・もうこの日記を見てれば判るだろうけど、今のシカゴは治安が良
い。もちろんアメリカなりに・・・という注釈が付くにせよ、かなり安心して散歩が出来る。
夜でもね。ショーウインドーを覗いてみたり、まだ残ってるツリーを撮影してみたり・・・、
待ち行く人を観察してみたり。もう 2006年は残り3日ですよ、という形容のしようがない締
めくくり感を感じるではなく、ちょっとだけクリスマスが終わって疲れちゃったなー的な祭り
の後、みたいな雰囲気を匂わせるシカゴの住人達。やっぱりここは日本ではなくて、アメリカ
だ。


地図通りに進み、発見した「Blue Line」の駅。もう結構夜中に時間が近づいているので、
人影もまばらなちょっと「恐ろしげ感」満載の地下へ続く階段を降りてゆく。ガラーンとした
コンクリートの壁に設置された改札へ再度CTAカードを差し込み通過。40分もすれば、上空
を飛び去ってゆく大型ジェット機の航空灯に照らされたオヘア空港が再度車窓の主役となる。
シャトルバスセンターで煙草を吸いながら、なっかなか来ない宿泊先ホテルのシャトルを待
ち、どこの航空会社だからわからんクルーと乗り合わせでホテルへ。そのままスプラッターに
されて海を渡りそうなホテルだと思っていたが、どうやらどっかの航空会社のステイ先らしい
ので、ちょっと治安含め安心をする(笑)。でも相変わらず廊下は芳香剤臭いし、コーヒー
メーカーのコーヒーは薄くて不味い。窓を開ければ干上がったプールが月夜に照らされてい
る。

ま、でもいいか。大きなベッドはフカフカしてるし♪

気がつけば日付はとうに変わっていて、もう12月29日だ。
残されたシカゴでの休日は残り8時間。

もうここからは時間を減らしてゆくのではなくて、楽しいことを残りの8時間でやりきる為に
予定を考えてそれを足してゆかなきゃ。パッキングをしながらたいして今回の旅は買い物をし
ていない事に気づく。持ち込んだ本もあまり読めてない。帰りの座席で少し読もう・・・。

横目に見たテレビではデンバーが寒波で多くの空の便に欠航が出たニュースを伝えている。
明日のシカゴはどういう天気なんだろうか。イレギュラー好きの俺に、何かご褒美でもあるの
かな?・・・いや無いな。カーテンを開け見上げた空は月に照らされた薄い雲がなんとも立体
的に被さっているだけで「明日はただの曇りだよ」と告げられた気分だ。

なんだか今の心のマインドスケープが映し出された様な空。明日成田に降り立った時に俺は何
を思うのだろう。うん、でもきっと何を思うでもなく、ただモヤモヤするのを止めて、目一杯
深呼吸するだけなんだろうな。

寝よう。時計は午前4時半を指している。もう3時間後にはシャトルに乗らなきゃ。

(最終話につづく)


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